酒蔵探訪〜楯の川酒造〜 後編

さて、今回は楯の川酒造さんの酒蔵探訪後編という事で、お酒の試飲と、佐藤社長さんを交えての対談となります。

特に後半は、楯の川酒造さんのもうひとつのブランド「子宝リキュール」誕生のいきさつについて詳しくお話を伺いました。
『なぜ酒蔵がリキュールなんて造っているんだろう?』と不思議に思われている方、必見ですよ。

たまたま4種類とも加水していない原酒で。冷やおろしとか秋あがりは半年というか、今はもっと経ってますけれど10ヶ月ほど熟成かけているものになりますね。
これとこれ(秋上がり原酒と風流おりがらみ)とがセットといいますか同じ出羽燦々のお酒で、熟成したものと搾りたてとを比べると同じ原酒でも味が違うかと。
このオレンジのラベルは本流辛口がベースの秋あがりでして、できたてはまだ未熟といいますかまだ早かったので。

── 味が落ち着いてから出荷するんだね。

そうですね、理想を言うと半年くらい寝かせたいのですけれど、それだと遅いって怒られちゃうので。
こちらの風流おりがらみは、底に澱が溜まっているので瓶をひっくり返して混ぜてもらえますと。

── すごい柔らかいよ。たまたま酒屋に寄ったら風流の新酒があったから昨日買ってきたよ。

12月1日から出荷してましたので、はやい所だと酒屋さんにありますね。

── はぁ、全然違う。
── こっちは源流ですね。
── 子宝シリーズも同じ敷地内で造っているんですか?

そうです。今は日本酒造りが忙しくて、なかなかリキュールにいけないのですけれど。
今のシーズンですと月に3回から4回くらいですね。

── 季節のもので造る感じですか?

ジュースを搾って冷凍してあるので、季節は季節なんですけれども1年中ある事にはなっています。
りんごとか人気のあるものは一年分のジュースが無くなっちゃって、そうなるとりんごの収穫まで1ヶ月2ヶ月品切れしちゃったりとかはあります。

── 一番人気は?

ヨーグルトですね。果物だとラ・フランスです。

── 今けっこうな種類があるもんね。

リキュールに関しては20種類くらいですかね。

ここで佐藤淳平社長の登場。

── どうもお邪魔しています。お忙しい時期にすみません。

いつもお世話になっております。

── 地元のお米ばかり使ってもらえているのが嬉しいなぁ。

山田錦が上がってくるのがもう少してからなのですけれど。
どうしても山田錦の場合は穫れる時期が2ヶ月ほど遅いので、11月からやっと仕込みが始まる感じですね。

── 出羽燦々は多くなったよね。

そうですね、最近ですと出羽の里とか色々なお米が出てますけれど。
やはり蔵としましても使い慣れるまでというのは時間がかかりますので。

── 出羽の里は時間がかかるよね。出羽燦々だって10年くらい?今は本当に良い酒米に、完璧になってきたしね。

最初はみんな苦労して賛否両論あったようですけれど。

── やっぱり最初はね。冬場は一回しか仕込めない訳だから、そのデータを採ってそれをどうしていくか。でも今は安定して良い酒米になったもの。出羽の里もいつかは化けるんじゃないかと思っているんだけどね。まだもうちょっと時間かかるね。

新しい掛米専用のお米なんかも今年からちらほらと話が出てるようなんです。
はやい所だと今年の23BYから新商品を出す所もあると思いますね。
あとは、つや姫で造っている所もありますし。

── つや姫は幾つの蔵?秀鳳さん、くどき上手さん、後藤さんとか。羽根田さんも出してましたね。

あとは上喜元さんもですね。
けっこうほかの蔵も新酒が出てるんですか?

── まだ出てないよ、今から。(2011年12月6日現在)

今日のお酒はどれが一番良いですか?

── 風流の新酒だね。柔らかい、やさしい。今度は~流もだんだんと付ける名前が無くなってきてるんじゃない?でも良い名前を次々と出してくるね。新しいところだと合流、上流かな。次は何流が来るのかね?

そうですね、そのうち韓流とかですかね。

── はっはっは!

良いネーミングがあったら教えてください。

── けっこうお酒の話題になるかもしれないね。

── この間CMを初めて観ました。ホームページにCMが載ってまして。

12月からやっていまして。2年間くらいかけて作ったんです。
YouTubeでもアップはしてます。

── 酒蔵のCMがYouTubeに上がっているとは思いませんでした。


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── 源流がすごく美味しい。

きつくないですか?

── 全体的に味の濃いのが好きなので。

4種類全部原酒なので昼から飲むのはちょっと辛いか思いましたが、判りやすいのかなと。

── マスターの所で飲むと、県外のお酒と比べても山形のお酒は香りも強いし味も濃いのかなと思います。

他の蔵のお酒も美味しいと思いますよ。

── 東京の酒販店でもこれらのお酒は購入できますか?

けっこう扱ってもらってますね。

── すごい人気なんだよ、楯の川さんは。今からリキュールを増やす予定はあるの?

ないですかね。もう行き着くところまでいっちゃったかなと。

── けっこう多いもんね。昔からあるのはラ・フランスとかヨーグルトだもんね。
── 最初出た時はびっくりしましたね。「これ、体に良いんじゃない?」って、グイグイ飲んで酔っぱらっちゃう女子が続出っていう。
── この間友達が3人目生まれたから子宝を買っていったら、えらい喜ばれて。「お前の方が子宝いるんじゃないの?」って言われて。

── でもあの(大吟醸にごり)梅酒は別格だね、本当に美味しい。

普通の大吟醸より高いですけど。

── でもその価値ある。普通の梅酒じゃない。梅酒とはまったく違う次元のものだもんね。
── 社長さんてお若いんですか?

33です。

── 小松っちゃん(主任:ブログ管理人)より若いじゃん!

一番最年長で杜氏が45とかですね。製造はみんな30代とか20代しかいないです。

── 杜氏って聞くともうお爺ちゃんが「俺様」ってイメージがありますけどね(笑)。

 

── 子宝シリーズの話が続いてますけれど、HPを拝見しましてシリーズ展開のいきさつは知っているのですが、なかなか取扱店などで農家の現状など情報を載せているところが少なく、結果的に消費者に伝わっていないと思うんです。そのきっかけの部分をお話し頂けますか?

きっかけというのがお米の契約栽培を始めた段階になります。
今は美山錦と出羽燦々を余目で10人の専業農家さんにお願いしていまして、6年目になるんですけれど、専業農家さんでもなかなか(経済的に)しんどいという話を相当聞かされまして、これは何とかしないといけないのかなと。

一番最初に契約栽培した時に等級がつかない規格外のお米というのが出てくるんです。それを全部うちで引き取るからという事で。
それで粕取り焼酎を造ったんです。規格外のお米は麹にして使えれば、というのがスタートなんです。
梅酒をやりだしたのは、なかなか焼酎が売れなかったのがひとつありまして。あとは焼酎をベースに梅酒なんかを漬けられたら良いかなと。それに夏場6月くらいの時期に仕事ができればというのがありました。
まずは規格外のお米を買う事で少しでも農家さんの手助けになればという思いもありまして。それがきっかけで焼酎や梅酒を造りました。

多分お米の農家さんも果樹農家さんもみんな一緒だと思うんですけれど、みんな結構しんどいなという話を聞くんですよね。
僕らが日本酒でお米を使うのがひとつですけれども、その他県内の果物とかでも何かしらPRできればな、という事で、たどり着いたのが梅酒の次に果樹を使ったリキュールなんです。果物って時期が非常に短いじゃないですか。夏場から秋にかけてシーズンが短いのですけれど、お酒にすると賞味期限が無くなっちゃうんですね。流通が可能になるんです。そうすると県外だけでなく海外にも出せる訳ですね。
それで山形のPRもして外貨も獲得して地元で還元できれば世の中の為になるのでは、との事で始めたんです。

初めから売れるとは思っていなくて、たまたま梅酒から始めて少しずつ種類を増やして今の形になりました。本当に片手間で夏場の仕事をちょっとやろうかなって思ったのが、あれよあれよと日本酒よりも多くなってますけれど。
全部が全部の農家さんのためになっているかと言えば、まだまだ農協さんに比べれば量も使ってませんし少ないですけれど、ちょっとでも地元の農家さんに貢献できればと。

── でもブームが来そうだよね。梅酒なんかも山形の梅なの?

梅だけは和歌山のものなんです。この辺だと「おばこ梅」というのが旧・松山町(現・酒田市松山地区)で作っています。
僕らが梅酒を始めた時って、すでに菊勇さんと上喜元さんがおばこ梅を使ってまして、もう残りが無かったので和歌山の梅で。
あとはマンゴーやコーヒーとか、県内で穫れないものもありますけれど、それ以外は全部県内の果物を使っています。

果物を食べるのって普段お茶とかと同じで日の高い時ですよね。夜だとあまり食べない。
りんごなんかもそうなんですけれど食べると量を食べられませんけれど、飲むとけっこう飲めるんですよね。ジュースなんかもそうですし。そうすると飲む事で消費も拡大できるだろうと色々と考えながら今の形になっていますね。

── りんご農家に行くとすごいよ。トラック1台分くらい落ちてるんだよ。熟してボトボト落ちちゃうんだよね。これ拾っただけですごい量だなと。売り物にならないけれど充分食べられるという。キズありで100円とかで売ればね、朝日町のりんごなんて何百円もするからね。でもそういうのを出しちゃうとブランドの価値が下がっちゃう。そういうのはジュースにすれば良いからね。

酒販店さんとしましては缶酎ハイと同じリキュールなんですけれど100円や200円のものよりは本格的なものを使ったものとして薦めて頂いていると思います。

── 全然違うもんね。

うちは元々日本酒蔵なので日本酒がメインなんですけれど、あまり日本酒を飲まない方にいきなり日本酒を飲んでくださいと言ってもなかなか厳しいものがありますからね。
味山海さんのお客さんは日本酒好きが集まっていると思いますけれど、やっぱり若い方に最初にお酒を飲んでもらうのに、ひとつのエントリーモデルとして梅酒や低アルコールの甘いお酒から入ってもらって、そこから日本酒につなげてもらえればと。

── 我々の社交組合の仲間にバーテンダー協会の人達がいるんだけれど、そこでリキュールを公募するとか、リキュールを使ったカクテルとかね、ちょっと話をしてみようかな。

若い方はけっこう自分で作りますからね。焼酎なんかもそうですし。そのままストレートで飲むよりかは割って飲んだりとか、それぞれじゃないですか。

── 全部の子宝シリーズをカクテルにするとか、そういうコンクールとか。当然その時は楯の川さんがスポンサーだけど(笑)。

そうですね。

── でもそういうのも面白いね。そのレシピを全国に発信すれば良い。
── 昔の果実酒って焼酎を使っているじゃないですか。そこで「日本酒ベースなんですよ」って飲んでもらって『日本酒の果実酒って軽いんだな』って飲んでいる人って結構多いんですよね。
── 日本酒のカクテルって大抵サムライだけだもんね。ただし日本酒をカクテルにすると日本酒本来の味が無くなっちゃうからね。安い酒ならサムライでも良いんだけれど、美味しいお酒はやっちゃダメだ。そのまま飲んで欲しい。でもリキュールはどんどん広がっていくよ。梅酒はあるけれど、日本酒でリキュールなんてあまり無いじゃない?

新しい市場ですよね。日本酒や焼酎やウイスキー、ブランデーなど色々種類がありますけれど、唯一リキュールというジャンルが伸びてますね。

── 女性のお客様はやっぱりワインや日本酒より梅酒系やカクテルがあるとそっちに行く方が多いので、味覚が甘いフルーツ系の飲みやすいのが良いんでしょうね。
── 私の周りも梅酒とかカクテルばっかりしか飲まないから。

最近は女性の方も日本酒飲むんじゃないですかね。

── 東京から人を連れてきた時に『またマスターの所に行きたい。』って言われたもん。
── 県外の地酒ファンは『山形のお酒は美味しい。』って言う人本当に多いよ。

逆に地元の人の方があまりに当たり前に飲んでいて。

── そう、常日頃飲んでるお酒が美味しいから当たり前になっているんだよ。だから「常に飲んでるお酒で良いや。」ってなる。それで違うお酒に行かないのね。

かなり保守的ですね。

── それで自分の地元のお酒をこよなく愛するのよ。『俺はここの銘柄しか飲まない。』でもそれがやっぱり地酒ファンなんだよね。
でも山形はすごいよ、日本一だね。みんなに言うんだよ。「山形のお酒は日本一ですよ。」って。
── って、時間が進むといつもマスターに言われる(笑)。
── 口癖だね。毎日ちょこちょこ味見で飲むでしょ。やっぱり美味いって自然に言葉が出る。
── こうして造っている所を観させてもらって、改めて美味しく飲めますね。
── 今度飲む時にね、ありがたくなるよ。お酒を飲むと蔵の様子と話の内容とか造っている人の顔とかがね、見えてくるの。それだから蔵を観るというのが絶対に必要になってくるんだね。
── 今日はありがとうございました。

以上、酒蔵探訪 楯の川酒造 後編となります。

次回は年明けに酒田酒造編を紹介する予定であります。
お楽しみに。

 

用語メモ

※ つや姫
山形県が今、力を入れてる水稲品種(山形97号)。県農業総合研究センター水田農業試験場(旧県農業生産技術試験場庄内支場)で育成された。2010年市場に登場。
「炊きあがりのつやと輝きというコメの特性を連想させ、首都圏の女性消費者の評価が高い」という理由で名称を「つや姫」に決定した。
亀の尾を祖先に持つコシヒカリ・はえぬき等の系統で、コシヒカリの美味しさを受け継ぐ品種の改良を重ねて完成した。稲の背丈は「コシヒカリ」より短く、耐倒伏性に優れているのも特徴。

つや姫使用の日本酒では他に六歌仙がある。また、有志が酒蔵に依頼して造った、オリジナル酒も存在する。
焼酎の原材料としても利用されている。

※ 大吟醸梅酒にごり
子宝大吟醸梅酒の2010天満天神梅酒大会グランプリ受賞を記念して特別に造った限定のにごり梅酒。
2011天満天神梅酒大会にて人気投票1位、大阪府知事賞受賞。
「果肉の入った梅酒でありながら、りんごのような爽快な印象」と評価される。

※ おばこ梅
酒田市松山地域特産。減反対策の一環として栽培が始まった。果実の肌が美しいことから「庄内おばこ」にちなんで名前がついた。
加工に重宝される中粒種で、緻密で厚い果肉、なめらかな果実肌が特徴。

※ 朝日町りんご
朝日町和合平(わごうだいら)で栽培される。サンふじ(無袋ふじ)。
和合平は寒暖の差が大きく、りんごの栽培に適した立地を有する。
東京市場でも最高値段で取引される。
山形県のふじりんごの生産は日本第3位


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